熊本〜人吉を走っていたD&S列車SL人吉だが、令和2年7月豪雨により肥薩線が被災。SL人吉は運休を余儀なくされた。JR九州は肥薩線とその沿線の応援企画として、令和3年5月〜11月までの期間限定でSL人吉を鹿児島本線(熊本〜鳥栖)で走らせた。本作は先行発売した『SL人吉 SL編』の復路版にあたる。そして今回のSL人吉は、通常編成とは異なりSL+客車3両の後ろにDLが付随しプッシュプル運転を行う特別編成となっている。DLのDE10形を先頭にしたSL人吉で、鳥栖からの復路展望を楽しむ。
　たくさんの見送りを受け鳥栖駅を出発したSL人吉は長崎本線を分け北部九州を南下する。しばらくすると新鳥栖駅から伸びてきた九州新幹線を頭上に見ながら並走。九州一の大河・筑後川を渡るとゴム産業で栄えた久留米へ。久留米を過ぎるとのどかな筑紫平野が広がりやがて大牟田へ。かつて炭鉱で潤った街の面影を専用線跡などで見ることができる。福岡県から県を跨ぎ熊本県へ入ると徐々に日も落ちてゆく。終点の熊本駅到着の頃には完全に日没となり、照らされた人工光と暗闇のコントラストが旅の最後に彩りをつけてくれる。